この町に来て,まず一番に興味をひいたのは,景色というよりもその町の名前であった。

Elといい,Cerritoといい,これらは英語の語形をしていない。もちろん,こちらではこうした地名は数多い。San Jose(サンノゼ)もそうである。Joseをどうして「ノゼ」と呼ぶのだろう。地下鉄(サンフランシスコの地下鉄をbartと呼ぶ)の駅名を見ても、明らかに英語名でなさそうなものが多く,何と発音するの戸惑うものも少なくない。また,住んでいるアパートから最寄りの地下鉄の駅までは歩いて約10分。この駅名は「El Cerrito del Norte」と付けられている。delの意味は,英語のof the, Norteは英語のnorth,したがって,El Cerrito del Norteは「北エル・サリート」という意味になる。

因みに,大学のあるバークレー(Berkeley)市の場合,最も北に位置する地下鉄の駅名は,North Berkeleyという。英語そのままである。

実際,El Cerritoという地名の由来を調べてみると,この語はスペイン語とのこと。スペイン語で「Little Hill」の意味らしい。Hill(丘)というのは,市の東側に位置する丘を意味するのであろうと推測する。ただし,「小さな丘」という風貌ではなく,かなり高い。また,山脈とは表現できないが,北から南へとずっと連なっている。単なるこんもりとした丘というイメージではない。

ところで,どうしてスペイン語がここの地名となったのか。最初に興味をひいたのはこの点であった。つまり,Ei Cerritoの成り立ち(歴史)についてである。

全くのにわか勉強であるが,こちらのHPを使って歴史を調べて解ったことは,以下の事柄であった。

①サンフランシスコ大地震以前(1900年頃),この地域にはほとんど人が住んでいなかった。丘(hill)の麓に沿って,この牧畜業が営まれていた。したがって,人間の数より牛の数の方が多かったとの記述あり。

②1906年のサンフランシスコ大地震(マグニチュード7.9と言われる)と大火は,エルセリートの発展の始まりであった。この地震と大火によってサンフランシスコからの避難民が発生し,それらの人々がこの地域に移動してきたからである。

③大地震前,この地域は「Rust」と呼ばれていた。その由来は,この地域にWilhelm F. Rustなる人物が住んでいたからである。彼はこの地域の初代郵便局長を務めた人物であった(彼は不動産業や鍛冶屋を営み,のち金物店の経営者となった)。

④しかし,1917年エルセリートが市となった時,サンフランシスコからの避難民からなる1500人が市民として加えられた。これらの人々はこの町の名を「Rust」と言うのを好まず,スペイン語で「小さな丘」(Little Hill)を意味する 「El Cerrito」に変更したというのである。

カリフォルニアは,ロサンゼルス(Los Angeles)を含めて,スペイン語由来の地名が多い。元々スペイン人によって開拓され,メキシコ領土であったという経緯があるから当然とも言えるが,サンフランシスコ大地震によって非難してきた人々がスペイン語名を好んだという点に驚いた。

現在のメキシコ人の多さの問題は別にして,カリフォルニアの風土におけるスペイン語文化というは歴史的にどのような展開していたのだろうか。これもこの土地に住んでみてあらためて関心が湧いた事柄の一つである。